反物質流

たんものしちながれ

昨日すごい調律師さんに出会いまして。

 
出会ったのは半月ほど前なのですが。
学生時代に行きつけだったメキシコ料理店で。
 
近所の寮に住んでたなんて話をしたら
「そこのピアノを調律してた」って
ただもう何年も触っていないとのことで。
 
そしたらほどなく、そのピアノを大切にされていた
前理事長夫人の訃報が届きまして。ほんと突然に。
 
ああ、呼ばれたな、って。
 
「あなた、あのピアノをよろしく」って。
 
早速、例の店を訪ねてそこから電話。
翌日にちょうど時間があるからということで即決。
 
寮の事務室に聞くと、実は別の方にお願いしていたのだけど、
調律だけでは難しい状態、なのだとか。
 
その方、到着するなりピアノの前に座り
(ピアノへの)あいさつ代わりとばかりに
軽くホンキートンクなフレーズを奏で
「大丈夫そうですけどね」と。
 
「こっちのアップライトは子供の散髪みたいなもんで」
驚くほど安い値段を言われ、そのまま作業開始。
 
調律師に特有のもったいぶった感じは微塵もなく
気の置けない旧友のように、ピアノをバラしだす。
 
「ちょっと触ってやれば10年20年いけますよ」
「ホントに調律しかしない方が多いですけど」
「まあ音も好みがあるんですけどね」
 
ハンマーの先をちょちょっと触ると音色が整う。
 
「いろいろお話いただくんですけどね」
「弦が半分も切れたようなのをタダ同然で直せとか」
「やりましたけど」
 
組み直す際、何かが落ちたので拾い上げると
折りたたんだシールの裏紙だった。
 
「スミマセン、扱いが悪くて」
 
ポケットにねじ込もうとすると
 
「あ、ちょっと、それ」
 
鍵盤の微妙な高さ合わせに挟んであったものだった。
 
金属パーツを磨いて、その日の作業は終了。
 
来週はいよいよグランドピアノ。
テンション上がりっぱなし。