反物質流

たんものしちながれ

磔に石打たずとも

磔に石打たずとも

頬を撫で額に口づけることでさえ

百人、千人と繰り返すうち

血が滲み、膚は破れ

一擦の愛撫、一触の接吻の

齎す痛みは激しさを増す

 

一人また一人と訪れる巡礼者が

遠退く意識を引摺り戻し

その列は果てることなく続く

口々に敬愛を囁きながら

血の滲む頬を撫で

破れた額に口づけていく

 

 

いまや私を縛るものは無いが

何気ない囁きにその痛みが蘇る

その無限の列が浮かび震撼する

 

人は列に並び、列は人を誘う

縄と綯われ、ゆっくりと私に絡み付く

 

私は狂い叫び、一目散に駆け逃げる

そこへ戻るわけにはいかない