2020-05-03 磔に石打たずとも 磔に石打たずとも 頬を撫で額に口づけることでさえ 百人、千人と繰り返すうち 血が滲み、膚は破れ 一擦の愛撫、一触の接吻の 齎す痛みは激しさを増す 一人また一人と訪れる巡礼者が 遠退く意識を引摺り戻し その列は果てることなく続く 口々に敬愛を囁きながら 血の滲む頬を撫で 破れた額に口づけていく いまや私を縛るものは無いが 何気ない囁きにその痛みが蘇る その無限の列が浮かび震撼する 人は列に並び、列は人を誘う 縄と綯われ、ゆっくりと私に絡み付く 私は狂い叫び、一目散に駆け逃げる そこへ戻るわけにはいかない