反物質流

たんものしちながれ

吉田寮大掃除という破壊行為について

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この記事の特に後半では吉田寮の存在意義について真面目に語られている。極めて重要なことが書かれていると思います。一方で面白半分に無自覚にやっているのでしょうが、この清掃企画自体もたいへん罪深いことをしている。ある意味、当局よりもずっと酷い。そのことに気づいている人は、意外と少ないようなので、書かせていただきます。

最近は世の中、どこもかしこもとても綺麗で、道ゆく人も勤勉で礼儀正しい。公有地の無駄なスペースもどんどん再開発され有効利用されていく。京大も例外ではなく、かつてあちこちにあった、ともすれば良からぬ輩のたまり場にもなりかねない「何だかわからない空間」は、この20年ほどで次々に駆逐されていった。物理的な空間よりは捉えにくいが、時間であったり組織機構であったりも同様、すべてが合理的・生産的に整えられていった。

あらかじめ定義された目的をもった物ばかりで構成されている空間、整理・整頓・清掃・清潔・躾の行き届いた住人、そこでは、定義した側の意図を越えた活動は生じにくい。「生産性」などの名のもとに人々を全体主義へと導く、そういう見えない力へのアンチテーゼとして、吉田寮は存在しているのです。

つまり、この大掃除は、建物ごと鉄球で打ち砕くよりも酷い、とんでもない破壊行為であり、何よりも住人がそのことに全く気づいていない、ぼんやりとでも抵抗を感じていないとすれば、恐ろしいことです。

とはいえ、またすぐ散らかるのでしょうが、今日で退去期限ですね。