反物質流

たんものしちながれ

1997 PC Conferenceの懇親会の帰りの電車でのPea夫妻との会話のメモがあったので貼っとく。

最初に僕がDr. Peaに話しかけると,彼はまず握手を求めてきた. 「あぁ,君のことは覚えているよ.昨日のシンポジウムで質問をしていたね.」 やはり,内容はともかく質問をしておいて良かった. 「お目にかかれて光栄です.ところで質問の内容は翻訳してもらっていますか?」 「たしか,『教育のための理想的なコンピュータとは何か』だったね.」 何だか勘違いされているのだろうか.僕はそんな質問はしてないぞ. 「ちょっと論点がずれていますね.僕が聞きたかったのはこうです.」 コンピュータの導入によって,教育現場における今までの画一的,非個性的ななものの考え方が打破され,子供たちの独創的な発想を支援することができるようになる. しかし,同時に,これを発想の支援ツールとして使うことで,ツールの特性に依存した,新たなステロタイプ的発想を招くのではないか. 「三宅なほみ先生は,『そうならないように気を配って行くのが私たちの使命でしょうね.』とおっしゃっていました.」 「おっと,これは僕が聞いたものよりずっと興味深い問題だね. あぁ,これが家内のクリスティーナだ. クリス,彼の質問を聞いてくれ...」 「なるほどねぇ.」 「ところで,君の言う新たなステロタイプ的発想とは,たとえばどんなものだろう.」 「そうですね,これは僕の個人的な問題なのですが,あまりにハイパーリンクに 慣れ親しんでしまい,こんどは紙に一方向的に文章を展開することができなくなってしまったんです. そのせいもあって,僕の教授は僕の論文は論点が転々としてさっぱり分からないとおっしゃってます.」 これには奥さんのクリスティーナさんが興味を示されました. 「あら,それはそれでいいのよ. いい,アメリカでは1980年代(だったかな?)に,子供たちの間から ???(意識分散症?)という病気が発見されたの. でもね,それは病気じゃなくて,現象なの.より進化した子達なのよ. あなたの先生や,ほかの一転集中型の考えしかできない人は恐竜みたいなもの. あなたが心配する必要はないのよ.」 「Netscapeはいま,PCだけじゃなくてテレビとか,もっと単純な機器のための ソフトをつくろうとしてるの. だけど,その前に必要なことは,アメリカ人にハイパーリンクについて 理解してもらうこと. あの人たちはあれが何だか分からないのよ.」 「彼らは階層構造,木構造は分かっても,ハイパーリンクは分からないんだな.」 「ああいったランダムなネットワーク構造がですか.」 「いや,ハイパーリンクは決してランダムではないよ.構造的なんだ.」 ピー先生は『ランダム』という言葉にえらく敏感だった. 「ハイパーテキストでは様々なリンクが張られるが,なぜここからそこに リンクを張るのか,そこには意味がなくてはいけない.関連性があるんだ」 「ハイパーテキストを作り出した人たちは,あまり注目されていない. そうではなく,ハイパーリンクの混沌を整理した,Yahoo!とか,AltaVistaとか 彼らが必要だった.」 「とにかく,恐竜は気にせず,自分の思うようにやってみること.」