反物質流

たんものしちながれ

what's your favorite colour?

 

 好きな色、というものはない。

 色はそれぞれ、周囲の色との関係の中で

 意味を持つものだから。

 

抽象画ばかり描いては、よくわからないことを言っていた

同じ寮の仲間だったシューヘーが美大の入試で答えた言葉。

柄にもなく哲学的だな、というか、実はこう見えて

頭の中は言語的な世界なんだろうか、なんて思った。

 

休日はよく美術室で過ごした。

BGMはだいたい清志郎

 

僕は平日は空き時間もなく、日曜も半分くらいは模試。

なかなか時間が取れず、2年生のときの課題を

高3の秋、茗溪展ギリギリまで描いていた。

 

シューヘーは肝心の美術の単位が危ぶまれていたが

外で大賞を取ってきて、さすがの先生も

通さざるを得なかった、なんて話は聞いたことがある。

 

そんな僕には実は、どうしても外せない色がある。

好きというか、嫌いというか、特別な存在。

 

カドミウムレッド。

 

僕の卒業制作はベニヤ3枚。

能のない奴はサイズで勝負、という「ご指導」だった。

 

そこにガンガン塗っていたのがカドミウムレッド。

「経費と一緒に首も落ちる」なんて言っていたので

たぶん先生がジバラで買ってくれていたのだろう。

 

恐ろしく強い絵の具で、どんな下地でも見事に塗り潰した。

そんな絵の具を一番面積の大きい場所に使ったものだから

後半は色に絵を乗っ取られないために必死だった。

 

色はそれ単独で存在するものではない。

 

それをシューヘーは他の色との関係で見ていたのだが

僕はそもそも「色」は絵の具という物体についてくるものだし

その物体も先生がジバラで買ってくれた、とかいった

社会的な文脈の中で存在するものだ、ということなのだなと

それでいて、絵の具の特性とはいえ、感覚的には色そのものと

絵の支配権を巡って争っていたのだな、と

20年以上も経って、ふと思ったので、ここに記す。

 

 

余談だが、英語で「好きな色は?」というとき

普通はwhichではなくwhatを使う。

前者は与えられた選択肢がある場合。

 

色は無数にあって、みんなちがって、みんないい。

 

余談の余談、タイトルのスペル直しました。