書籍紹介:ウェブ人間論(再掲)
- 作者: 梅田望夫,平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/14
- メディア: 新書
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ウェブ進化によって、人間はどう変わるのか?
『ウェブ進化論』の著者でシリコンバレー在住の梅田は、「ネットの世界に生きる」感覚を語り、「リンクされた脳」による知の可能性を明るく描く。ネット社会の「負の部分」は「見ないようにするリテラシー」を、また、リアルでもネットでも、社会を所与の、巨大なものと捉え、「自分に適した場所に移る」ことを選ぶ。
一方、『顔のない裸体たち』で匿名社会における個人の振る舞いを浮き彫りにした平野は、ブログに「本当の自分」を表現する作者たちに関心を寄せる。ネット社会に没入することで、彼らにとって好ましからぬリアル社会のあり方を、却って強化する点を指摘し、「現実が嫌な時には改善する努力をすべき」と主張する。
そんな両者が、「ウェブ時代の教養」として「読み・書き・考える」こと、中でも情報を構造化して捉えることをあげ、構造化がしっかりなされた書物に子供の頃から親しむべきことでは一致をみている点は意義深い。基礎力があってこそ、ネット上の断片的な情報から意味のあるアウトプットを導き出せるということだろう。
余談になるが、「グーグル」や「はてな」といった「今のインターネットを支えている若者たち」が映画「スターウォーズ」に投影する自らの精神性への理解、特に梅田・平野ともに「ダークサイド」を外在的な敵としている点は、その世界で育った者として物足りなさを残す…この続きはブログで。
この本が出てすぐ2年ほど前に書いた文章で、学会誌の書籍紹介という性質上、それと分からない程に婉曲にだが、実は梅田望夫氏を暗に非難するものだった。日本というプラットフォーム、社会的インフラから多大な恩恵を受けて自己形成したにも関わらず、それを支えようとせず、自分の都合に合わせて高飛びするなんて甚だ無責任、まさにフリーライダーじゃないか、と思ったわけである。
私は平野啓一郎氏より3歳上のロスジェネ1期生で、新人類、バブル世代の脳天気さ、無責任さの尻拭いをしているという感覚は少なからずあった。梅田・平野両氏の対談も、計らずもその構図で読んでいる。
最近はしかし、私自身が日々の生活の中で組織の閉塞感を強く感じているせいか、ここでこのまま踏ん張るよりも、結果としてもっと貢献できる方法を取るべきではないか、と思うことも多くなっている。そう思うと、梅田氏は確かに、自身の観点から日本社会に貢献しようとていることが見えてくる。色々な読みはできるにせよ、あれだけの情報を日本語で発信し続け、さらに多くのコメントのすべてに目を通すというのは、やはり並大抵ではないし、個人的な利益だけを考えれば不要なことだろう。
まあ☆を一つ二つもらって気を良くしているだけとも言えますが。
- 作者: 梅田望夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02/07
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- 作者: 平野啓一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/03/29
- メディア: 単行本
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