反物質流

たんものしちながれ

a thought

鴨川デルタという所があって、賀茂川と高野川が交わって鴨川になる。

賀茂川を上がれば今の家、高野川を上がればかつての職場、そして

鴨川を下れば木屋町がある。川沿いの道を僕は自転車を駆って行く。

そんな歲月を束ねる、ここは扇の要のような場所。

 

コーヒーを片手に、ふと思った。

ゆく川の流れの、果たしてどちらが過去で、どちらが未来なのか。

流れに乗って未だ見ぬ先へ、そして海へ…という方が一般的だろうか。

けれども、自分の未来は、源流の先の雫の中にあって、静かにその時を

待っている…その方が、僕にはしっくり来た。

 

空のカップをゴミ箱に放り込み、京阪電車に乗って仕事場へ行く。

 

(追記)

学生時代には、鴨川デルタを挟んで、洛中に同志社、洛外に京大という

別の構図があって、謂わば人界と魔界を隔てる場所でもあった。

まだバブルの記憶も新しかった頃には、魔界の子供達は折に触れ

「あっちに行く時は気をつけなさいよ。雪駄に短パンじゃダメよ」

などと諭されていた。

 

学生時代、バブルは終わった、皆がそう実感した頃だろうか、

同窓生と集まり、そのまま俊太郎の家に押しかけて泊まった。

先に起きて、当時まだ第一線のアナリストだった植草先生と

代議士さんの討論番組を見ながら、俊パパと朝食。

 

植草先生が数字やグラフを巧みに使いながら、いかに経済が

危機的状況か、鋭く指摘する一方、代議士先生はただただ

景気は良くなる、と根拠なく自身満々の言葉を繰り返すだけ。

「政府の無能ぶりが手に取るようですね」などと知った口を

利いていると、俊パパから思わぬ言葉を聞くことになった。

「政治家は嘘でもいいから景気は良くなると言わないと。

悪い悪いと言っていれば気分が冷え込みますます悪くなる。」


明治以来、我が国は「パッと戦争」「パッとオリンピック」

そうやって冷え込む経済を盛り上げてきた。

しかし、もうそういうのも効かないほど、この国の、特に

真ん中から下の世代の多くは、己の無力も痛感している一方で

政治も経済も何も信用していない。

 

リスクをとって投資するだけの資金もない、貯金は増えない、

一方こんなに低金利なのに先行きを案じてローンも組めない。

そもそも車も家も、家庭や恋人すらも欲しいと思わない。

否、思えない。何かを持っているごく一部の人のほかは

 自分にも、この国にも、明るい未来なんか、あるわけない、

そもそも未来は明るいなんて、何を根拠にそんなことが

信じられるのか、頭悪いんじゃないのか、そんな空気だ。

 

そんなところで安保法制を強行採決なんかして、

中身はともかく、人々の心には止めを差すことには

なりはしないか。

 

羽化

蛹化の直前に山椒の木に戻したアゲハの一匹が今朝、羽化しました。

実はもう一匹は寄生蜂にやられたようで、小さな穴が空いていて

萎んでしまいました。そういえば蛹になる前の動きが怪しかった

あれは、寄生した蜂のせいだったのかも知れません。

知る限り蛹になる前には育った木を降りて離れた所に行くのですが

寄生された方の一匹は、山椒の木で一旦蛹化のポーズを取った後

別の木に移り、またもとの山椒に戻って蛹になったのでした。

あまり擬人化するつもりもありませんが、本来の挙動と、寄生の

影響とが、せめぎ合っていたのかも知れません。知らんけど。

将棋

日曜日、アゲハの観察を終えて家に入ると、倅が将棋をしようと

言ってきた。塾通いに忙しい倅が久々の将棋サロンへ行った日で

負かされた腹いせにか親父と勝負してやろうという魂胆だろう。

 

僕は駒の動き程度しか知らないので一手10分以上かかることも

多いのだけど、そういえば倅に急かされたことは、これまでも

一度もないように思う。

 

平日は顔を合わせる時間も少ないので、1日1手ずつ、指し手に

付箋を貼ってメッセージをメモ書きして、今日も続いている。

 

アゲハ

子供たちが飼っていたアゲハの幼虫がそろそろ蛹になりそうで

ケースの中では羽が伸びないということで山椒の木に戻した。

 

ふと見ると、二匹のうちの一方はもう幹にじっとして動かない。

もう一方は尻尾の側をだらりとぶら下げていたかと思うと

糞をしたのに続けてかなりの量の液状のものを排出した。

 

そして意を決したかのように幹を降り、しばらく植木鉢の縁を

ウロウロし、故意か過失かポトリと落ちて、そのまま一直線に

駐車場を渡り、家の壁を上り、時々上体を大きく反らせて

何かを確認しながら行ったり来たりして、またポトリと落ちて
今度は塀の方へと一直線に進み、また上体を反らせ周囲を窺い

そうこうしているうちに植え込みにたどり着くと、何だか納得

したような風で周辺を確認すると、ポジションを決めてじっと

動かなくなった。

 

子供の頃から、なぜか蛹になるときは育った木を離れてどこか

違う場所に行くのは知っていた。どうやって行くのかは今回

初めて見た。なぜ行くのかは、相変わらず分からない。けど、

少し分かったような気がした。

 

アゲハ

子供たちが飼っていたアゲハの幼虫がそろそろ蛹になりそうで

ケースの中では羽が伸びないということで山椒の木に戻した。

 

ふと見ると、二匹のうちの一方はもう幹にじっとして動かない。

もう一方は尻尾の側をだらりとぶら下げていたかと思うと

糞をしたのに続けてかなりの量の液状のものを排出した。

 

そして意を決したかのように幹を降り、しばらく植木鉢の縁を

ウロウロし、故意か過失かポトリと落ちて、そのまま一直線に

駐車場を渡り、家の壁を上り、時々上体を大きく反らせて

何かを確認しながら行ったり来たりして、またポトリと落ちて
今度は塀の方へと一直線に進み、また上体を反らせ周囲を窺い

そうこうしているうちに植え込みにたどり着くと、何だか納得

したような風で周辺を確認すると、ポジションを決めてじっと

動かなくなった。

 

子供の頃から、なぜか蛹になるときは育った木を離れてどこか

違う場所に行くのは知っていた。どうやって行くのかは今回

初めて見た。なぜ行くのかは、相変わらず分からない。けど、

少し分かったような気がした。

 

イーハトーヴの発電所

高校生の頃、尊敬する人はグスコーブドリと言っていた。

農村を飢饉から救うために自ら犠牲となり火山を噴火させる科学者。

よくわからなければアルマゲドンブルース・ウィルスでも

イメージしといてくれ。

 

長らくそんなことを考える機会すらなかったけど、今でもやはり

いつかそういうことがあれば、迷わずそうしたいと思っている。

 

でもね、天災ならいざ知らず、そういうの前提にしたものを

人間が作ってはいけないんじゃないかと、思うわけです。

必ずしも原発のことだけを言っているわけじゃないですけど。

 

それだけ。